『芥川・太宰に学ぶ心をつかむ文章講座』 読了!

2023年11月28日

けれども人生は、ドラマでなかった。二幕目は誰も知らない。「滅び」の役割を以て登場しながら、最後まで退場しない男もいる。

太宰治 『東京八景』

皆さんこんにちは。囲炉裏屋です。

今日ご紹介する本は、出口汪さん著の『芥川・太宰に学ぶ心をつかむ文章講座』です。

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読もうと思った理由

  • ブログや小説を投稿している身として、偉大な小説家の文章術を知っておくことが必要と感じたので

印象に残った言葉

満月の宵。光っては崩れ、うねっては崩れ、逆巻き、のた打つ浪の中で互いに離れまいとつないだ手を苦しまぎれに俺が故意と振り切ったとき女は忽ち浪に呑まれて、たかく名を呼んだ。俺の名ではなかった。

太宰治 『葉』

読んで学んだこと

  • 様々な作家の素晴らしい文体に触れることで、文章力を深めることが大事であるということ
  • 魂で描く文章の中にも技巧を光らせ、作品を形作ること

感想

皆さんも僕の文章を読んでいて思っているかもしれませんが、僕は言葉で思いを伝えることが苦手です。

大体形式ばった文章を書こうとして、本当に書きたいことを封印してお行儀よく文章を作る。こんなことがこのブログを始めてからもよくあります。

そんな自分の文章の持つ悪いイメージを払拭したい、もっと自由に自分の感情や見えている景色を表現したいと思い立ち、この本を手に取りました。

この本ではかの高名な文豪、芥川龍之介と太宰治の作品や残した手紙から、美しい文章を作り出す技術であったり、深く鬱屈した感情の塊を文章に乗せるすべを記した本となっています。

正直に言うと、僕はこのお二方の作品をあまり読んだことがありません。芥川龍之介は『蜘蛛の糸』と『羅生門』、太宰治は『走れメロス』くらいでしょうか。特に後の二作品は国語の教科書にも載っていたので、読者の皆さんにもなじみ深いのではないでしょうか。

さてそんなわけで、前知識もなくこの本に載せられた小説の抜粋を読んでみたのですが、これが僕には、目の前で鮮やかな風船がさく裂したかのように、衝撃でした。

この本ではそれぞれの表現方法を対照的にとらえていて、芥川龍之介は『理知的で精緻な文章』、太宰治は『情感のこもった自由奔放な文章』と評しています。この本に載っている小説の一部を読んでみると、なるほどそう評するにふさわしいな、と思うようになります。

読者の皆さんの中には「芥川や太宰などの一部の天才が書き残した文章など素人には到底マネできっこない」と思う方もいらっしゃるかもしれません。確かに、今から文章を学んだところで、偉大な作家の横に並ぼうなど、そんなおこがましいことは考えていません。しかし、近づこうとする一歩が大事だと僕は思います。よく使われた言葉ですが『学ぶとは真似ぶを語源にしている』といいます。芥川や太宰の精密な、あるいは魂を乗せた文章を参考にすることは、自分の使う文章を一つランクアップさせてくれるだろうと思うのです。

芥川と太宰はどう発想して、素晴らしい文章を書くことができたのか、この本に解説も含めて書いてあります。気になった方はぜひ購入してみてください。

それでは、また明日。